「姉ちゃん、最近勉強してる?」
 「いや……うん、しなきゃとは思ってる」
 「なんだよそれ」
 「なんか、気が抜けちゃった。ハハハ」

 ハハハ、はぁ……と気が抜けて、がくんと項垂れた。

 小6の弟にまでバレてるってどうなの? と思いながら。

 「そうなんだ。まぁやりたくないときは、やらなくていいんじゃないの?」
 「――ウン。そう、かな」
 「そうだって」

 なんだ、励ましにきたのか、と気がついて弟の優しさに心が綻ぶ。

 ニッと笑うと、私に似た顔の弟もニッと可愛い笑顔を向けてくれた。

 「そういえば、もうおにぎり作んないの?」 
 「うん? あ、あー……おにぎり、ね」

 おにぎりと言うとすぐにお兄さんの顔が思い出されて、渋い顔になってしまった。それを見落さなかった弟は、すかさずなかなかのツッコみをしてくれた。

 「姉ちゃんフラれたの?」
 「ち、違うっ! ってか、あんたドコでそんなこと覚えてくんのよ!」
 「そんぐらいの単語、俺だって知ってるしー」
 「マセガキ」 

 肩あたりを小さく叩きあいながら、小さく頬を膨らませると弟に『姉ちゃん大人げねー』って笑われた。
 
 小学生からそう言われる私って……と思いつつため息を吐くと、妙に弟が神妙そうな表情を浮かべた。

 「いや、振られたから勉強手につかないのかと思ってた」
 「何? その恋煩い的な扱い」
 「母さんがそう言ってた」
 「お母さんの差し金か!」
 「へへへ」

 大人ぶった態度をとったりする弟だけど、結局はこんなもので。

 そう言う時に可愛いと思ったりするから、私も相当なブラコンだろうって思う。

 はぁーっと言いながらも、弟に真摯に答えることにした。

 なんか、誰にでもいいから気持ちをぶちまけたい気持ちに、なっていたせいだけど。


 「受験ね、受かったら会おうって約束してるの」
 「姉ちゃんの好きなやつと?」
 「……う、うん」

 好きな人、と他人から言われるとやけにドキドキして、耳に熱を持った。

 そんな私にはやはり気がつかない弟に安堵して見ると

 「じゃあ、頑張んなきゃね」

 あっさりと、大事なことを言う。

 うん、ほんとに……その通りだ。