――2月


 併願申請していた私立高校の受験日が来た。

 とても寒い日で、路面は凍ってるし公共機関にも影響が出てるとかで、それはもう大荒れの日だった。

 お兄さんのお陰で万全を期していた私は、鼻水ひとつ出ることなくピンピンした体でその日を迎えたのだけれど……

 「この天気には、やられそうかも」

 流石にぼやいてしまう。

 ここから駅まで歩いて、そっからまた受験校まで行って。

 想像しただけでぐったりする。

 空模様を見ながら、すっかり気が滅入っていた私に背後から現れた父が、神の声を響かせた。

 「だーいじょーぶぅー! 父さんが送ってくよぉことちゃぁあん」
 「ほんとに!?」

 いっつも私の邪魔ばかりすると思っていた父が、奇跡のような提案をしてきた。

 「あったりまえだろ? 娘の大事な試験の日に、何かあったら俺はご先祖様に顔向けできん!」
 「え? そこ!?」
 「どこだ!?」
 「いや、うん。いいんだけどね。ありがと」
 「おうおう、礼には及ばん」

 ドンっと胸を叩いて、誇らしそうな父。

 ちょっと不安いっぱいだけど……今日と言う日には有難い助けだ。

 「いってきます」

 硬い表情で、受験票を持ったことをしっかりと確認して母にそう言うと

 「大丈夫よ、あなたなら絶対」

 微笑みをくれる母。

 私はその母にぎこちなくニコリと微笑み返して、家を出た。

 だって―――こっちに受かったら、本命の公立落ちちゃうかも、なんだもん。

 塾の先生はどっちかは受かるだろうなんて言うから。

 その言葉が頭にぐるぐるして、不安が募る。