俯いて、口を開かない私を余所に、傍に会ったポールにちょこんと腰かけたお兄さんはクスリと笑った。
「こーら。不貞腐れた顔すんなよ」
「うぅ……。だって、インフルエンザとか、罹ったことないし」
「俺もない」
「病気には、強いんですよ? 私」
「俺もまぁ、強い方」
「だったら!」
そこまで言って顔を上げたけれど、背後から差す陽がお兄さんの顔を照らして表情が見えない。
「でも、今年は分かんないだろ?」
「そう、だけどっ。私は、私は……っ」
勢いで何かを口走りそうになって、ぐっと堪えた。
言ってしまったら、目じりにたまった涙もこぼしてしまいそうだから。
私は、グッと拳を握りこんでまた俯く。
涙を零さないように。
そしたら
カタン
と音を立てて、お兄さんが立ちあがって私に近づいてきた。
影がゆっくりと私に重なる。
1歩――
「俺、お前に会うの楽しみだった」
2歩――
「おにぎり、美味しかったし。お前といると、すごく安らぐんだ……」
3歩――
「ホントは……毎日会いたいくらい」
目の前に立って、今までで一番近くの距離に居た。
そっと手があげられると、私の頭にその温もりが乗せられる。
「合格発表、いつ?」
言われた言葉にドキドキが止まらない私と最高に近い距離で、お兄さんの温もりと息遣いまで感じて心臓がおかしくなりそうだ。
お陰でこぼれそうだった涙が引っ込んで、小さく手が震えた。
「3月の……えっと、何日、だっけ。えと、えと―――」
緊張のあまり、大事なことが頭から出てこなくてふわふわした。
――どうしよう!? ほんとに思いだせないっ!
プチパニックを起こす私を見て、お兄さんはクスクス笑う。
「こーら。不貞腐れた顔すんなよ」
「うぅ……。だって、インフルエンザとか、罹ったことないし」
「俺もない」
「病気には、強いんですよ? 私」
「俺もまぁ、強い方」
「だったら!」
そこまで言って顔を上げたけれど、背後から差す陽がお兄さんの顔を照らして表情が見えない。
「でも、今年は分かんないだろ?」
「そう、だけどっ。私は、私は……っ」
勢いで何かを口走りそうになって、ぐっと堪えた。
言ってしまったら、目じりにたまった涙もこぼしてしまいそうだから。
私は、グッと拳を握りこんでまた俯く。
涙を零さないように。
そしたら
カタン
と音を立てて、お兄さんが立ちあがって私に近づいてきた。
影がゆっくりと私に重なる。
1歩――
「俺、お前に会うの楽しみだった」
2歩――
「おにぎり、美味しかったし。お前といると、すごく安らぐんだ……」
3歩――
「ホントは……毎日会いたいくらい」
目の前に立って、今までで一番近くの距離に居た。
そっと手があげられると、私の頭にその温もりが乗せられる。
「合格発表、いつ?」
言われた言葉にドキドキが止まらない私と最高に近い距離で、お兄さんの温もりと息遣いまで感じて心臓がおかしくなりそうだ。
お陰でこぼれそうだった涙が引っ込んで、小さく手が震えた。
「3月の……えっと、何日、だっけ。えと、えと―――」
緊張のあまり、大事なことが頭から出てこなくてふわふわした。
――どうしよう!? ほんとに思いだせないっ!
プチパニックを起こす私を見て、お兄さんはクスクス笑う。

