ちぃこと1

 「テストでね、2回ほど番号で記入するテストがあったんです。その時たまたま塾でその鉛筆をもらって持ってたんですけど……どうしても分からない問題が合って、試しにコロコローってしてみたんですよ。そしたら4って、出て。時間もないからとりあえず4って書いたら当たり! たまにはそういうのもありかな? みたいな」
 「へぇー。御利益ありそうだね」
 「それで、2回目のテストでも同じことがあって正解して。まぁたまたまなんですけど。お守りなんです。だから、どうぞっです」

 私がそう言って、両手を開いてどうぞと言うと

 「いいの? お守りなのに」

 不安そうに尋ねてきた。やっぱりいい人だ。

 「いいんです。私はお兄さんにもらったホンモノがあるから」
 「それって、俺も同じでしょ?」
 「いーの。私もお礼なんですから。お兄さんがいるから、自習室通うことができました。だから、ありがとうなんです」
 「俺、なんかした?」
 「はいっ、とっても」

 好きにならせてくれました。

 とは口にできずに、ただにっこり笑った。

 でも……

 「あ、鉛筆なんかでごめんなさい」
 「なんで? お前の大事なもんだろ? ありがと。受験の時、絶対持ってく」

 向かいから手を伸ばして、わしゃわしゃって頭を撫でられた。

 お兄さんの大きな手は、とっても心地がイイ。

 乱れた髪を懸命に戻しながら、私は嬉しかった。
 
 「でも、俺のお礼が足りてないよね」
 「えーいいですよ、別に」
 「それはダメ。なんか欲しいモノない? 高いのは無理だけど」
 「いや、ほんとにいらないです」
 「ダメ。言わないと」

 わざとらしく怒った表情を見せながら、おどけてそう言われた。