「もー、この子ほんとヤダ」
そう言って、はぁーってまたため息を吐いてから、よいしょって感じで体を起こして、お兄さんはお弁当を食べる手を再び動かし始めた。
――何か、したっけ?
気になるものの、さっきよりぶすっとした表情をなぜか見せるお兄さんに声をかけづらくなって、私は黙って食事を続けることにした。
しばらく無言が続いて、なんだか気まずくなってきて本当にどうしようって悩み始めた頃。
「ちょっ、コレ! ま、まさかのアレ!?」
目をキラキラさせて、お兄さんが叫んだ。
――何? なんでこんなにテンションの上がったの?
不思議に思いながらも、真っ二つに割って食べようとしていたお兄さんのおにぎりを見た。
「シーマヨ、ですけど……」
どこからどうみてもシーマヨなそれに、感動したかのような表情のお兄さん。
もしかして、嫌い? とか。
「好きじゃないですか?」
「は!? この俺の様子見て嫌いに見える?」
「……ですよね」
「はー、すげー! ほんっとすげー。これって作れるんだ。うわー」
普段、知的な感じのお兄さんなんだけど、ことおにぎりが絡むとやけに少年だ。
って、シーマヨってそんな感動なものだろうか?
「作れますよ? シーチキンにマヨネーズ混ぜて、それで今日は和風にしようと思って、少ししょうゆを垂らしてますが」
「和風!」
「はい。気にいらないですか?」
「すごい」
最早私の言葉は耳に届いてない様子で、それほどに感動しながらお兄さんは食べてくれた。
「やばい、ウマすぎる」
もぐもぐと噛みながら、幸せそうな表情のお兄さん。私はそのお兄さんの顔を見て、幸せな気持ちが広がった。
お兄さんの、こういう自然なところが好き――

