ここの自習室は、最初は1つづつ席を開けて席札を配る。
 
 札を決めるのは入口にいるおばちゃんなので、席の指定もできない。
 
 そうやって最後の1つ前、59番まで1つ飛ばしで埋まれば、次は間を縫うように席の貸し出しがされる。

 というふうになってるみたいだって、座ってから気がついた。
 
 入ってしばらくは私の両隣が開いていたのだけれど、1時間ほど経っていよいよ私の隣も……ということみたい。 
 

 カタン

 
 チラリと横を見ると、やはり私よりは年が上のお兄さんが座る。
 
 無印かどこかで買ったんだろうクリアケースから小さなペンケースを出して準備をし始めたのを見て、私は再び自分の机に視線を戻した。
 
 ――じろじろみちゃ、いけないよね。
 
 隣に今まで誰もいなかったのに、突然誰かがいると思うとちょっとドキドキする。
 
 それがましてやクラスの男子……じゃなくて、私からすればずいぶんと大人に見えるお兄さんだったりするから、余計に。


  ちょっぴりドキドキして震える気持ちを押さえながら、私は気分を変えようと英語を止めて数学に変えることにした。

 椅子の下に置いた鞄を引きずり出して、中から数学の問題集を出す。
 
 そして英語の教材を鞄に入れ、また椅子の下に鞄を潜り込ませる。 


 その時……小さくコツリと私の足が触れた。


 ん? 何?

 
 目線は机上。
 手だけは椅子の下。
 少し傾いた身体は左より。
 そして足は……右。