「あれ? もしかして忘れた、とか?」
急にフリーズした私に心配そうな表情を浮かべたお兄さんは、ちょっと焦り気味にそう尋ねてきた。
いや、がっつりばっちり持ってきてるんだけど、だけど……
あーもー!!
悩んだって、どうしたって作ったのに仕方ないよ、ね?
引かれたらもう2度とやらないってことで、しかも最悪来なければ2度と会わないから大丈夫!
パニックを起こし過ぎた私は、勝手に逆切れモードのような状態になってバーンと勢いよく弁当を取りだした。
「ぅおうっ」
ビックリしたお兄さんは変な叫び声を上げた。
そして私は……
「お、お、お弁当! に、したん、デス。きょ、う……」
末尾はごにょごにょした口調になりながら、なんとか言った。
――もうどうにでもなれ!!
ギュッと目を瞑ったまま差し出して、私はお兄さんの表情を見なかった。
引かれてたらどうしようと想像しただけで、恐い。恐すぎる。
心臓がバクバク言ってるのを感じながら、ゆっくり瞼を開けるとポカーンとした表情のお兄さんが目に入った。
「お、にい、さん?」
予想していたどんな表情とも違って、それはそれで対処に悩む。
数秒待った後、ようやく……氷が解けた様にお兄さんの表情は和らいできて、そして真顔で
「コレ、君が?」
やっとのことで、口が開いたみたいな感じで尋ねてきた。
私は、その質問にブンブン頷いて肯定した。
するとお兄さんはすっごく嬉しそうな顔で
「やばい。弁当とかめっちゃ久しぶり! いいの?」
「も、もちろん」
英語の勉強ばかり最近していたせいか『イエス! オフコースッ』と言いそうになるのを寸でのところで止め、笑顔で答えた。
どうやら私の心配は杞憂に終わったようで、ふーっと息を吐いた。

