ちぃこと1


 「でさ、今日も……くれる?」

 「う、うんっ。もちろん!」

 「はぁ……良かったぁ。これだけは絶対欲しいと思って、死ぬ気で走った。マジで良かったー」

 心底嬉しそうに言うお兄さんに、私もキュンと胸が鳴る。

 こんなに私が握ったおにぎりを喜んでくれるのは、きっと世界中でもお兄さんがダントツトップに違いない。

 喜んでるのは私が作った――ではなくて、ただおにぎりだけかもしれないけれど。

 それでも私はにやける顔を押さえられないまま、鞄に手を入れて意気揚々とお弁当箱を包む袋に手を伸ばした。

  ――ところで気がついた。

 『お弁当なんて渡したら、重すぎない?』

 調子に乗って弟に言われて浮かれて作ったけど、お兄さんは単純におにぎりが好きみたいなだけで。

 そもそも米が食べたい云々って言ってた気がする。

 なのに、勝手にこっちが喜ぶかなって卵焼きやらなんやら付けてきたら、もしかして、うっとうしいんじゃ……?


 なぜか急に不安がよぎって、変に心臓がドキドキして、寒いのに冷や汗が流れ出した。

 どどど、どうしよう!?

 ギュッと、目を瞑ってうわーって心の中で叫ぶ。

 すると思考をぶった切るようにお兄さんの声が聞こえた。