ちぃこと1

 でもこんなところで泣くなんて恥ずかしい。

 私は両手でグイッと目じりを擦った。

 するとお兄さんがふわっと私の耳元に顔を近づけてきた。

 そして

 「ごめん、外付き合ってくれる?」

 と小声で囁いた。
 
 私は、お兄さんがあまりに近くに居て、ドキドキした。
 
 だから顔もあげられなくて、コクンと小さく頭を下げて頷く。

 私はいっぱいいっぱい。

 なのに、そんな私の心情は一切気付かない様子で、私の右手を突然握りしめるとお兄さんはずんずんと歩き始めた。

 続いて私は、男の人と手を繋いで歩くと言う緊急事態に大パニックを起こし、アワアワと口が閉まりきらない状態で小走りで後をついた。



 ――――――



 慌ただしく席札をおばさんに返し、お兄さんも来たばかりなのにあっさりと席札を返して、私達は近くの公園に来ていた。

 図書館近くのこの公園はとても広くて、春や秋などには散歩やウォーキングで人が溢れているけれど、正月明けの日曜日。

 肌寒いを通り越したこの寒さの今日は、流石に人は見当たらない。

 けれど、気にした様子もなく手を繋いだままお兄さんは無言で歩き続けて、小さな建物まで歩いた。

 建物――というと相当な語弊があるんだけど……

 ようは、休憩場所。

 ちょっとしたベンチとテーブルがあって、ドアがあるわけじゃないから風も通るんだけど、それでも囲いがあるからまだマシといった場所だ。

 その近くに自販機あって、お兄さんは私をベンチに座らせると自販機に行ってしまった。