少し掃除してから出ようと決めていた予定をあっさり覆して、私はお弁当作りに集中した。
弟の案を採用して、5種類の手まりおにぎりに卵焼きとウインナー、それから昨晩の残りのほうれん草のおひたしを添えた。
「姉ちゃん俺には!?」
「ない」
「えー、俺発案者なのにぃ?」
とかなんとか叫ぶ声を背後に聞きながら
「いってきまーーす!」
家を飛び出した。
鞄には、今日の教材と2つの同じお弁当。
それから……ちょっと用意したプレゼント。
ホクホクする心と、飛び跳ねたい気持ちでいっぱいの体を持て余し気味に、少し出遅れた分を巻き返すべくいつもより強めにペダルを漕いだ。
お昼御飯の時になって、お母さんが「ほうれん草がない!」って叫んでいたのは私の預かり知らないところの話、だけど。
寒さの中を全速力で走り、少し汗ばむくらいの体温で図書館に辿りついた。
相変わらず無愛想なおばさんから札をもらい、自習室へと入る。
今日は前回よりも人が多いみたいで、41番だった。
――通路側の端か……まぁ、悪くないけど。
でもやたらと風が通りやすくてちょっと寒いんだよな、と思いながら札を机に置く。
とりあえず向かいはお兄さんじゃない。
隣はまだしばらく埋まらないだろうし、なんて思いながら室内を見回したけれど、お兄さんは見つからなかった。
――何か、あったのかな?
思い起こしてみても、お兄さんはいつも私より早くに来ている。
今日はお弁当なんて作ったから、いつもより出遅れたくらいだ。
それなのにお兄さんが来てない。どうして?
私は少し悲しい気持ちになった。
でもそれだからと言って、勉強から逃げられるわけでもない。
切なく落ち込む気持ちをなんとか収めて、きっと来ると祈りながら今日は日本史に取り掛かった。

