そんな嬉しい始まりを迎えた新年。

 約束の日曜日、私は朝から満面の笑みでおにぎりを作っていた。

 お兄さんからリクエストの「おかか」は外せないとして。

 めちゃくちゃ喜んでくれた「梅」も捨てがたい。

 それに新しくシーチキンマヨネーズ。

 これもレパートリーとしては外したくないな……


 なんてあれこれ考えていたら、勉強以外のことに頭を使うって楽しい! って思った。

 それが何て言ってもお兄さん基準だから余計に。
 

 ――あーもー!!


 いろいろ考えながらピンクの空気で悶えて、足をジタバタさせながら必死におにぎりの具材に悩む私。

 その様子を、知らないうちに背後に立って見ていた弟。

 突然後ろから


 「姉ちゃん、気持ち悪いよ」


 と放たれた一言で、私は浮足立っていた世界から現実へと帰ってきた。

 続いて、はぁ……とため息をつきながら、大人ぶった態度を装った弟が続けた。 

 「何悩んでるわけ?」

 これから成長期の弟はまだ私より少し目線が下だ。

 その弟がちょっと上を向きながら偉そうな態度で私を見てくる。

 偉そうなんだけど、その一生懸命上からな態度が可愛い……とか思いながらも『そうだ、弟だって男には違いない』と考え直して参考までに聞くことにした。

 勿論、おにぎりの具材について、だけど。

 「ねえ、おにぎりさー何が好き?」
 「は? おにぎり?」
 「そうそう」
 「なんだよ、おにぎりかよ」

 吐き捨てる様に偉そうに言う弟。

 いつもならキレるところだけれど、今日と言う最高の日、そして良き参考人である弟のこの態度に、私は寛大だ。