結局――また、名前を聞き忘れた。
 と思ったのは、帰り道にもらったイチゴみるくを舐めているときだった。

 今日は、私が帰ろうと席を立った時にはお兄さんはすでに居なかった。

 途中から間に人が来て13番のお兄さんは見えにくかったし、私も時間を計っていたので集中していたから気付かなかったのだ。

 一声もないなんて寂しいな、とは一瞬思ったけれど。

 明らかに集中して勉強している人に声をかける受験生もない。

 今日楽しかったからこそ、バイバイも出来ない寂しさはあったけれど、今日は次という約束をして別れた大進歩の日。

 最後の一欠けらまで噛むことなく飴を転がして、私は寒さ厳しい冬の中を走り抜けた。



 ――――――


 年始初めての塾で、年末のテストが返却された。全国展開している私の塾は、成績も全国単位で出る。

 結果としては、めっちゃイイ。

 「頑張ったな」

 先生が本気で褒めてくれて、文句も付けなかったので私はその場でジャンプしそうになった。

 全国(塾生の中で、だけど)が35位。

 クラス内で2位。

 偏差値で表記すれば63。

 ふふふっ。

 笑いがこみ上げて仕方ない。

 だって、私の志望校は偏差値62。

 1ポイント上回っている。

 ニヤニヤが止まらない私を、どうか皆が気持ち悪がらずに許してくれと言いたい。

 その日の塾での勉強はほんとに楽しくて、めずらしく話声も大きくなりがちで、先生にも注意されてペロリと舌を出した。

 けれど、それくらいでめげるほどの喜びじゃなかった私。

 ついに先生の方が折れて、注意は2度目で止まった。

 ニヤニヤしながら帰宅して、ニヤニヤしながら寝た。

 日曜日まで後2日。

 私はどうしようもないくらい、好調だ。このまま頑張ろう、そう心に誓い深い眠りについた。

 日曜は、シーチキンマヨネーズも作りたいな……そう思いながら。