なぜここを選んだのか、というと単純にお母さんが「自習室とかで勉強したらどう?」とかって勧めてきたからだ。
 
 家はそんなに広くもなく、3Kに1家4人住まい。
 
 一応受験生の私を考慮して部屋を弟と分けてはくれたものの、隣から漏れるテレビの音は騒がしく、集中力が途切れがちになるのは私の集中力の無さのせいだけではないはず、と思いたい。
 
 おまけに父は、勉強なんてしなくても受かるときは受かる……という無茶苦茶な理論の持ち主で、到底私の理解者とはなりえない。
 
 そんな折り、母が塾の日以外に行ってみたら? と言いだしたのが自習室だった。
 
 とは言うものの自習室という提案を受け入れたくとも、なかなか近くに自習室が見つからない。
 
 母に聞いても、昔は割とあったのに……という返事ばかりで当てがない。
 
 どうしたものかと思案していた矢先、調べ物ついでに行った中央図書館でこの自習室の存在を見つけた。
 

 そんなわけで私は今、中央図書館自習室の45番に座っている。
 

 ……しかし。 


 周りは大学生風な人ばかり。
 
 明らかに中学生なのは私だけで、置いてる参考書一つとっても私のモノとは違っていて「大人」な感じがする。
 
 その中の一人になっているこの状況にドキドキしながら、私は自分の持ってきた英単語学習の為の準備をそっと始めた。


 緊張だ何だと言いながら始めてしまえば何とやら……で、例に漏れず私も集中して勉強に取り掛かっていた。
 
 小さくコチコチと時計の音が響く。
 
 どのくらい経ったときなのか。

 
 ギギギギ

 
 音がやけに近くで響いてその音に集中力が切れ、顔を上げると右隣の44番からの音と気が付いた。