ちぃこと1



 「ごちそうさま。間接キス」


 そんな言葉が隣から聞こえてきて、私のピンクの思考は中断。

 したけども―――


 「は、はわわっっ! ち、違くって!!」

 「ぷはっっ! 冗談、だって。ははっ、おっかしー」
 
 「ちょ! もぉーー、お兄さん!!」


 お兄さんを顔を赤くしながら、睨みつけ頬を膨らませる。

 それに効果なんてないだろうけれど、私なりの怒りを露わした―――つもり。

 でもやっぱりそんなのは微塵も伝わってなくて、膨らませた頬をむにゅっと摘ままれた。

 「おにいひゃんっっ」

 「うひゃひゃひゃっ」

 完全に私は遊ばれていた。

 これって、好きな人からされる仕打ちとしてはめちゃくちゃ酷い。

 とは思うものの、好きな人の手が自分に触れてるのが嬉しくて、それにNOとは言えない。

 上目遣いに睨みながらも、ニヤニヤ笑い続けるお兄さんに、結局私もつられて一緒に笑い声をあげた。

 「はぁー笑った」

 ひとしきり笑って、お兄さんは笑いつかれたのかふぅーと息を吐きながらグタっとベンチにもたれかけた。

 私もそれに習って深く腰をかけた。


 「そんなに笑ってもらえて光栄ですぅ……」


 わざと嫌味っぽくそう返しながらニヤニヤしてお兄さんを見た。

 けれどそれはお兄さんも一緒で、私の方を見ていた。

 ただ――目が、本気。

 「お兄、さん?」

 同じように笑っているものと思ってただけに、突然見せた表情にドキリとする。

 ――何? どうしたの?

 折角仲良くなれたと思っても、やっぱりスキル不足の私。

 すぐにオロオロしてしまう。

 どうしたら……ってそればっかりだった私にお兄さんはすっと手を伸ばしてきた。

 そして

 わしゃわしゃわしゃ

 私の髪の毛を鳥の巣みたいにしてくれた。

 「ちょっ、やだっっ」

 流石の私も年頃の女の子ですから、いくら好きな人とはいえ。

 ううん、好きな人の前だからこそ髪は乱したくないもので。

 もうすでにぐちゃぐちゃなんだけど、お兄さんのその行動に若干の抵抗を示した。