「ごちそうさま。間接キス」
そんな言葉が隣から聞こえてきて、私のピンクの思考は中断。
したけども―――
「は、はわわっっ! ち、違くって!!」
「ぷはっっ! 冗談、だって。ははっ、おっかしー」
「ちょ! もぉーー、お兄さん!!」
お兄さんを顔を赤くしながら、睨みつけ頬を膨らませる。
それに効果なんてないだろうけれど、私なりの怒りを露わした―――つもり。
でもやっぱりそんなのは微塵も伝わってなくて、膨らませた頬をむにゅっと摘ままれた。
「おにいひゃんっっ」
「うひゃひゃひゃっ」
完全に私は遊ばれていた。
これって、好きな人からされる仕打ちとしてはめちゃくちゃ酷い。
とは思うものの、好きな人の手が自分に触れてるのが嬉しくて、それにNOとは言えない。
上目遣いに睨みながらも、ニヤニヤ笑い続けるお兄さんに、結局私もつられて一緒に笑い声をあげた。
「はぁー笑った」
ひとしきり笑って、お兄さんは笑いつかれたのかふぅーと息を吐きながらグタっとベンチにもたれかけた。
私もそれに習って深く腰をかけた。
「そんなに笑ってもらえて光栄ですぅ……」
わざと嫌味っぽくそう返しながらニヤニヤしてお兄さんを見た。
けれどそれはお兄さんも一緒で、私の方を見ていた。
ただ――目が、本気。
「お兄、さん?」
同じように笑っているものと思ってただけに、突然見せた表情にドキリとする。
――何? どうしたの?
折角仲良くなれたと思っても、やっぱりスキル不足の私。
すぐにオロオロしてしまう。
どうしたら……ってそればっかりだった私にお兄さんはすっと手を伸ばしてきた。
そして
わしゃわしゃわしゃ
私の髪の毛を鳥の巣みたいにしてくれた。
「ちょっ、やだっっ」
流石の私も年頃の女の子ですから、いくら好きな人とはいえ。
ううん、好きな人の前だからこそ髪は乱したくないもので。
もうすでにぐちゃぐちゃなんだけど、お兄さんのその行動に若干の抵抗を示した。

