ちぃこと1

 そしてゴクンと飲み込んでから、お兄さんをチラリと見やる。

 「食ったか? 悔いなし?」
 「食べました、けど……悔い?」
  
 ――悔いってなに? おにぎりに悔いとかそんな深いモノあったっけ?

 なんて悩んでいると、タイムオーバーを告げられた。


 「もう時間切れ」


 お兄さんは告げるなり、私のおにぎりを持つ手の上から、自分の手を重ねておにぎりを持った。


 つまりは……私の手をお兄さんの手が私の手を包んでいるって事で。


 「ぅひゃあああっっ」


 思わず叫んでしまう私。

 も、こういうの慣れてないんだってばっ。

 って思うのにそれに気付かれることもなく

 「いただき」

 一言の断りを入れて、ガブリと噛みつき……一口で残りの半分を食べてしまった。

 「おっ!?」

 おにぎりがっ!! と叫びそうになり、「お」で止めた私。と、私に構わずにもぐもぐし続けるお兄さん。

 その態度についていけなくて、飲み込むまでお兄さんを凝視した。

 そして、そんな私の瞳を見つめ返しながら食べるお兄さん。


 初めて、だと思う。
 

 好きだと気がついてからも、まともにお兄さんの顔見たことなんてなかった。

 だから、どんな顔なのかも正直分かってなかった。

 鼻筋が通ってて、とっても黒目がちで、黒縁の眼鏡がなんか知的な感じで。黒髪がつるつるで、綺麗に切りそろえられてる。

 特別何かあるわけじゃない、普通のお兄さんだ。どこにでもいる。

 漫画とか小説に出てくるような、超絶美形! とか、学園一モテルとかそんなタイプじゃない。 

 でも私には、このお兄さんが見せる笑顔とか、優しい笑みとか、さっきみたいに笑ってるところとか、自習室で集中して勉強してる姿とか。

 その全部がカッコよく見えちゃうんだから、もう間違いなく恋なんだって思う。

 だって、今目の前でもぐもぐしてる姿すら、愛しさを感じるんだから。

 ――って、愛しさって!!
  
 ピンクの思考に占領されかけている私は、自分で自分を辱めて勝手に顔を赤くした。