そして今日も読み通りなのか誰もいない休憩室。また同じ位置に腰をかけ、鞄を置いた。
 荷物を挟んで反対の位置にお兄さんが座る。これも前と同じ。
 そのことがまた私に嬉しさを与える。


 ガコン。
 ガコン。


 2回程、パックジュースが落ちる音がしたかと思ったら、前と同じように


 「はい、どーぞ」


 ってごく自然にお兄さんにリンゴジュースを差し出された。

 けれど、流石に前回と今回は訳が違う。
 

 ――もらう、理由ないよね。


 タダでもらってしまうことに抵抗を感じ、困った表情を浮かべたままお兄さんを見ると


 「おにぎり、くれない?」
 

 私が持ってて当り前って顔でニコニコとそう言われた。

 つまりは、おにぎりの代償がコレってこと?

 それならと納得した私は、あえてリンゴジュースに手を出さずに尋ねた。


 「鮭、梅、おかか。どれがいいですか?」
 

 尋ねた直後にお兄さんはぱぁっと輝いた顔を見せて、即答する。


 「梅! 梅で、お願い!!」
 

 犬に例えたら涎を垂らしてそうなほど嬉しそうな表情で、満面の笑みで。

 私はその表情に耐えられなくなってクスクス笑いながら、鞄から梅と書いたおにぎりをひっぱり出した。