紅白を見ることもなく、新年のお笑い番組を見ることもなく……

 とにかく、受験生スタイルを崩すことなく、年末年始を過ごした私。

 そんな私を見て父は


 「つまんないー、一緒にテレビ見ようよぉ~」


 とダダを捏ねていたけれど、私はそんな父をサラリと無視して勉強し続けた。

 だって、そうでもして集中してなきゃ、なんとなくお兄さんを思いだしてしまうから――

 それに、勉強という逃げ道はどこかお兄さんに近づいている気がして、つい縋ってしまう。




 年明け早々、開館した図書室に喜び勇んで私は家を出た。

 まだ冬休みの私は、前回褒められたおにぎりを一生懸命作って……

 しかももしお兄さんに会えたら一つ渡しても大丈夫な様に、3個持って家を出た。

 前回は鮭だけだったけれど、今日は「梅、おかか、鮭」のコラボだ。

 お兄さんがどれを選ぶかなって想像しながら作るおにぎりは楽しくて、いつもより少し大きめに作ってしまう。

 「はい、どーぞ」

 いつも通りそっけないおばさんから席札を貰って、自習室へと足を運ぶ。

 札を見ると15番。

 年末と同じくらいの時刻に出たはずだけれど、新年のせいか来ている人はとても少ない。 

 15番ってことは7人……か。

 この7人の中にお兄さんがいるという期待をしていいものかと不安に感じた。

 けれど


 「ぁ……」


 小さく声が漏れてしまったのを許して欲しい。あまりにも嬉しすぎてキュンと胸が高鳴った。
 
 13番の席にお兄さんが居る。つまりは私の少し前に来たってことだ。

 自分と生活スタイルが似通っているのかな? って勝手に想像しただけでなんだか嬉しい。