パックに付いたストローを袋から取り出して刺す。
 
 それに小さく口を付けて吸った。
 
 今までパックジュースを飲むのに緊張したことなんて、無い。
 
 だけど、お兄さんの前でジュースを飲むって事がやけに恥ずかしくて、ずずずって音がしたらどうしよう! とか、飲んでる姿が変じゃないかな? とか、いろんなことが気になり過ぎて飲んでる姿が見えないように、妙な俯き加減で一口飲んでみた。

 
 「おいしぃ……」
 
 
 緊張しながら口にしたリンゴジュース。けれどその感想は意外な程するりと口から出た。
 
 自分が思っていた以上に喉が渇いていたみたい。
 
 お兄さんからもらったジュースが美味しい、ただその事実に頬が緩んだ。

 小さく喜びの表情を浮かべながらジュースを飲む私がおかしかったのか、お兄さんはクスクス横で笑い始めた。
 

 「それだけ喜ばれたら光栄だね」

 
 にやっと笑って、お兄さんは自分用に買ったコーヒーのパックにストローを突きさした。
 
 表情を隠していたつもりが、喜んでいるところまで見られていたことが恥ずかしくて、慌ててジュースを左側に置いた。そのまま誤魔化すように、右手に持ったままだったおにぎりを口元に持っていって……考えた末に、やっぱり小さく齧った。
 
 リンゴの酸味から、お米の甘みへと変化した口中。
 
 その味を噛みしめながらゆっくりと飲み込む。
 
 ジュースを飲む以上に緊張する行為だったけれど、我ながら美味しいおにぎりだなと空腹のお腹が少しずつ満たされて、また頬が緩んだ。