室内には新聞を難しい顔をして読むオジサンと、自販機でコーヒーを買うお姉さんの2人が居た。
 
 私の読みは正しかったみたいで、空いているみたい。
 
 入口正面におじさんが座っていたので、入口右手のベンチ奥に座って私はおにぎりを取りだした。
 
 ここで昼休憩を取ってもいいことは知っていたけれど、どうやら食べ物の販売はされていないことも気付いていた。
 
 だから今日は、自分でおにぎりを2個作って持ってきたのだ。
 
 鮭をお母さんが朝焼いていたから、それをもらって鮭おにぎり。
 
 空腹には堪らない……よだれが出そうなのを堪えて包んでいたアルミホイルを開いた時、例のお兄さんが休憩室に入ってきた。


 うわーっっ 


 さっきの『お腹鳴り事件』が私の中でまだダメージがあるのに、お兄さんが来てしまった。
 
 よくよく考えればお兄さんも御飯は食べてなかったのだから、今休憩室に来ても不思議ではない。
 
 でも、何も今来なくても……と真剣に自分の行動を呪いながら、私は頬を少し赤くして俯いておにぎりを手に持ち直した。
 

 バサリ
 

 私が食べようとしたと同時に、オジサンが新聞を閉じて席を立った。
 
 自販機を見ると、コーヒーを買っていたお姉さんもいつの間にか居なくなっていた。
 

 そして……

 
 「良かった。飯、あったんだな」
 
 
 お兄さんがニコッと笑いながら近づいてきて、ごく当たり前に私と同じベンチに座った。