「ユキ、もう、ライは帰ってこないと思った方がいい。」
「帰ってくるなんて思ってないよ?…でもさ、やっぱ夏になっちゃうと思い出しちゃうんだよねぇ。すごい幸せな思いをした時も、いなくなって辛い思いをしたことも。」
「…そりゃそーだよなぁ。…はぁ、俺いつになったらライに勝てるんだろう。」
雪菜は苦笑いして「ごめんね」と瑠偉に謝った。
瑠偉が雪菜のことをスキなのは有名な話。
この町の人ならだれでも知っている。
だから瑠偉のことを好きになる人なんて少なかった。
あたしぐらいしか、いない。
それも10年以上、なんて。
雪菜とは別れ、あたしと瑠偉の二人っきりになった。
「…なぁ、ナッチャン。」
「ん?どした?」
「今の俺は、ライにどれだけ負けてる?」
「…100点中80点!」
「おせじ言ってよ!っあー、勝てねぇ。」