「入らないのか?カレー大盛り食うんだろ?」
「食べないっ!」
「そうか。俺はケーキ食うけどな」
「じゃあ食べる」
「……変なヤツ」
ドアを開けると、見慣れた空間が広がる。
あたし達に気付いたおじさんが、嬉しそうに笑みを向けた。
「いらっしゃい。今日は二人一緒だったのかい?」
さっきまでとの笑みとは少し違う意味を含んだ笑みを向けられて、彼は少しムッとした表情で
「そんなんじゃねぇよ」
と、吐き捨てた。
なんだろう。そんなにはっきりと否定されると少しぐさりとくる。
「二人とも、いつものでいいのかい?」
「はい」
「ああ」
おじさんが店の奥へと向かい、あたし達は席に腰を下ろした。
今日は、前回あった一人ぶんの空席はもうなかった。
