「あーん!アズマのヤツ帰ったらぶっとばーす!」


あたしは涙目で叫びつつ、テニスコートまでダッシュしていた。

周りの目なんかどうでもいいくらい、“ソレ”を見られた恥ずかしさはとんでもないものだった。

それも、男子に。

まだ大人しい丘野くんだったからいいものの、クラスのおしゃべり男子になんかに見付かっていたらどうなっていたことか……!

とりあえず、応急処置で絆創膏で隠したものの、首筋に絆創膏なんて“いかにも”って感じじゃないのよ~!


「あっ!セツナ!10分遅刻よ」

「ミズキ!ごめんごめん……寝坊しちゃって」

「寝坊って……あんたまた授業中に寝てたの?もうすぐ期末だよ~、大丈夫なの?」

「大丈夫、大丈夫……多分」

「もーう。あんた抜きじゃ全国大会出られないんだから、部活禁止令なんか発令されないでよね!」


ミズキがラケットで肩をトントンしながら口を尖らせる。

そう。あたし達はダブルスを組んでいるのだ。