それにしても、よく先生に起こされなかったもんだ。
あたしも随分と“起きてるフリして爆睡”するのが上手くなったんだなぁ。
一人でうんうんと頷いていると、目の前の少年は眉をハの字にして困り顔。
「あわわっ、ゴメンね丘野くん!起こしてくれてありがとう!あたし、部活行かなくちゃ……」
「あ、待って、谷口さん」
「えっ?」
「これ、今日の授業分のノート。よかったら使って」
「で、でも、丘野くん家でノート読み返したりとかは……」
「ああ、頭に入ってるから大丈夫」
「ぐぬぬ……流石成績トップの言うことは違うなぁ」
「ご、ごめん!そんなつもりじゃ」
「あはは、わかってるよ~!ありがたく借りておくね!」
「うん……どうぞ」
その時、フと彼の視線が“ある一点”を見詰めていることに気が付く。
あたしの目線より、少し下の辺り。
『なんだろう?』と思ってその辺りに視線を移すと、そこには寝不足の原因でもある“愛の証”がくっきりと。
顔全体が一気に熱を帯びる。
「じゃ、じゃあ部活行くね!」
「う、うん。頑張って、谷口さん」