トシノサレンアイ- 狼と仔猫 -


バイトを終え、小走りで家を目指す。

二階の一番右端にあるあたしの部屋。

窓から明かりは差し込んでおらず、真っ暗だった。


「アズマ、まだ仕事なのかな?」


腕時計を確認すると、時刻は11時半。

残業にしては遅いなぁ……

がっかりと項垂れながら、少し重たい足取りで階段を上る。

でも、もしかしたら昨日みたいに節約のために電気消してるだけかもしれないし。

だとしたら、逆にあたしが驚かせてやろう。昨日の仕返しだ!

あたしはなるべく音を立てないように鍵を開け、そーっと部屋へと忍び込む。

そして、少し大きめの声量で


「ただいまっ!!」


と、言った。

……けど、返事はない。


「アズマ?」


電気を点けて部屋中探したものの、彼はどこにも居なかった。


「なーんだ。やっぱり残業か……」