「出来たっ!」


節約のために鶏むね肉のステーキだけど、どうにか工夫してジューシーに作れた。

きっとアズマ、ニヤニヤしながら食べてくれるんだろうな。

想像するだけで、嬉しくなってくる。

あたしは冷蔵庫の野菜室にあった有り合わせの野菜でサラダも作り、ステーキの横に添えた。

フと時計を眺めると、時刻は6時46分。


「やっばい!バイト遅刻する!」


急いで身支度を整えて家を出る。

そして、階段を二段抜かしで駆け降りた。

バイトが終わればアズマが部屋に居てくれる。

そう思うと、バイトに向かう足取りさえも軽く感じてくる。

3月初旬。
まだまだ寒いこの時期。

あたしは赤く染まった頬を隠すように、マフラーを口元まで引き上げた。