「それじゃ、そろそろ出るか」


気が付いたら、8時5分前になっていた。

いつもなら長くて仕方がないこの時間が、二人でいるととても短かった。


「うん。お仕事、頑張ってね」

「お前も勉強と部活頑張れよ」

「はーい」

「返事は短く!」

「はいっ!!」


アズマは軽くあたしにキスを落とすと、一段抜かしで階段を駆け降りていった。

まるで、夫婦のようなそのやりとりに頬が火照りだす。

今日は、なんだか頑張れるような気がする。

あたしはラケットバッグを背負って、アズマと同じように一段抜かして軽快に階段を駆け降りた。