角を曲がった辺り…
「遅くなった、悪い」
「…―ぃ、遅いよ」
そんな声が耳に届いたので私は足を止めて耳を澄ませて、その会話を聞き入ってました。
「…やば。学生証落とした」
「馬鹿だ…」
「あいつと ぶつかったときか…」
「早く拾ってくれば?」
「今から行く」
…これって向かってきますよね?
今渡すべきです、よね…?
「あの――…!!」
「慧にぃ、動かない方が良いかも。危ない奴等来そうだ」
『慧にぃ』
その単語を聞いた私は学生証を手から滑り落としたみたいで、音こそ出なかったものの私の頭の中は混乱でいっぱいで。
慧にぃと呼ぶのは凌くんしか私は知りません。
…なら、あの金髪は八神くんなのてすか?
でも、いつも黒髪です。
あんなの、いつもの八神くんじゃ…。

