戻れるかすら分からねぇんだ。
哀の事を忘れるのは無理だが…いつかは乗り越えなきゃいけねぇ時が来るよな。

その時の…哀はどうなってんだろ。

あいつ無自覚だからな…。
結構モテてんのに。

最後の最後まで敬語だったし…ほんと変な女だわ。

「…凌」

「なに?」

「カッコ悪いよ、俺は」

そう。
俺は別に格好良くなんかない。

「俺から見れば慧にぃは格好良い」

「ふは、何だそれ」

クスッと笑って窓の方を見た。

それから目を瞑って考える。
そこに映るのは哀の笑った顔や怒った顔に泣いている顔。

この約一年半で見た、様々な哀の表情だった。

「…っ」

だっせーな、俺。