こうなったら、マー君にキチンと身辺のケジメをつけてもらい、カレンを幸せにしてやって欲しかった。
アンコールを要望するおじさん達を完全にシカトして、カレンは麻紀の元にストレートヘアをなびかせ、タタタッと走って戻ってきた。若い。
「この曲、マー君のお気に入りなの〜!カラオケ行くといつもカレン歌うんら〜!」
その場でバタバタ足踏みする。
「あああっ!気持ちよかった~!!あとでもうイッパツやりてえっ」
カレンはそう叫ぶと、ドカッと椅子に腰を下ろした。
カレンの大胆な発言に、空席ひとつ挟んだ左隣の30代前半のカップル客がギョッとした目で、麻紀達の方を見る。
アルコールで血液の循環が活発になったためか、カレンは頬だけでなく、肩や腕までピンク色に染まっていた。
酔っ払ってわざと乱暴な言葉使いと仕草は、何か憎めない瑞々しいお色気に満ちていた。
もうイッパツやりてえって…
麻紀は思わず、苦笑した。
麻紀だって人のこと言えないが、歳上として、優しくたしなめる。
「カレン〜あんた、でっかい声でイッパツとか言わないの!
嫁入り前の娘なんだからさあ。それじゃ、欲求不満みたいじゃーん」

