カラオケに興じていたおじさんグループに割り込み、強引にマイクを奪い取った。
ゴルフ客らしきおじさん達は突然、割り込んできた若い娘に呆然としていた。
だが、おじさん達の視線は、すぐにカレンのミニスカートから伸びるスラリとしたナマ足に釘付けになった。
やがて、テレビモニターに『経験』という曲のタイトルが映し出される。
カレンがピンクのネイルアートが施された小指をピンと立ててマイクを持つ。
やたら色っぽい前奏に合わせ、細い身体をクネクネとくねらせ、思い入れたっぷりに自分で自分の身体を抱きしめながら、歌い始めた。
♪やめれ〜……
その曲なら、一応麻紀も知っていた。
(何、歌っちゃってんのよ…完全にオヤジ仕様だよ…)
意表を突いたカレンの曲選択に、麻紀は脱力した。
麻紀だって、そんなの母親が観る懐メロ番組でしか聴いたことがない。
しかし、前列にいた中高年グループのおじさんは「おっいいね!」などと言って大喜びだ。
カレンのクネクネ踊りを見ながら、麻紀は思う。
ーーーもう、カレンは完全にマー君に洗脳されているのだ。
カレンはマー君なしでは生きていけない。
後戻りは出来無い。
…私と清志のように。

