カレンは、酒が1/3ほど残ったコップに視線を落としながら、眉を歪めた。



「すっげえ気持ち悪かったです……
なんかヌメヌメしてて、ズブズブしてて、妙に生温くて……

…最初は、ね」


「は?最初は?」


「うん…店長にそうされてるうち、カレン、気持ち良くなってきちゃったの……

なんかうっとりしちゃって、そのまま舐められてたの。

…でも、しばらくして、ハッと気付いて、カレンてば、馬鹿⁉って思って、店長の腹、トウッて膝蹴りして、事務所から逃げ出したんです」



カレンは顔を上げ、恥ずかしそうに麻紀の目を見た。


「へ、へえー…まあ当然よね」



膝蹴りって……

なんだか予想もつかないカレンの話に、麻紀の調子が狂ってきた。



「カレン、大好きなヒトがいたのに。片想いだったけど。
あんな店長に指舐められて感じてしまうなんて。

すっげえ罪悪感で、なんだか、何もかも嫌になっちゃって。
バイトも学校行くのも嫌になって。
全てが嫌になって高校も中退したの…」



カレンは、栗色のしなやかな髪を一筋掬い、自分の人差し指に絡ませた。


伏せた目の長い睫毛。
まるで、情事が終わった後のようなアンニュイな仕草と囁くような声。