記憶力が最近著しく低下している麻紀は、神経衰弱が苦手だった。

小1の雄哉は、たいがいビリだ。


いじけると可哀想なので、麻紀はたまにわざと負けてやる。


「僕とママ、同んなじチームね!」


兄や姉にはかなわない。

そう悟った雄哉は麻紀の膝に乗ってきて言う。


雄哉の濡れ髪からシャンプーの匂いがほのかに麻紀の鼻先をくすぐる。


(ちゃあんとシャンプーして、髪の毛洗ってるんだ…)


まだ7才の雄哉の頭を撫でる。


母親がいなくても、けなげに生活してることがわかり、雄哉がたまらなく愛しくなる。


麻紀の目頭がふっと熱くなった。



子供達と暮らしたいのは、山々だ。

でも、戻ってきてと葉子は懇願していたが、真和の元に戻っても、うまくいくわけがない。


1人息子の真和と息子を溺愛する葉子の絆は、所詮、他人の麻紀など寄せ付けないほど深い。


無理しても破綻するのが目に見えている。誰も幸せにならない。


かといって、麻紀と清志が暮らす2DKの家に3人の子供達を連れてくるのも現実的ではなかった。


竜聖も梨花も雄哉も今の小学校でがとても気に入っている。


転校など可哀想だ。子供達も拒否するだろう。