「あの人、カレンの彼なの。
不倫なんだけど。

奥さんと別居してカレンと住んでるのに、離婚話がこじれてて別れられないの。
カレンと結婚するって約束したのに。

だから最近ずっと喧嘩してるんだ。

仲直りでここに来たけど、また喧嘩。
奥さん、すごく意地になっててこれ以上刺激したら、まずいからって。

やっぱりすぐには別れられないって言うの…」



麻紀の大好きな話題だ。
うわあ、面白い!と叫びそうになるのを堪えた。


「そうなの、大丈夫?」


麻紀は意外プラス深刻そうな表情で、カレンを見詰めた。


カレンは、麻紀が真剣に自分を心配してくれていると勘違いしたようだ。


「うっ…」


ずっと我慢していた何かが緩んだように、一瞬、美しい顔面を歪ませた。


「カレンちゃん、どうしたの?」


思わず、麻紀はカレンの華奢な身体に腕を回す。


カレンは両手で顔を覆い、麻紀にその身体を寄せて来た。麻紀は言う。


「何も出来ないけど、話だけは聞いて上げられるから。
話せば、ラクになることもあるよ?

こんな私でもいいのなら、いくらでも聞いてあげる。
今夜、うちの子供達が寝たあと、ここのホテルのバーでお話しする?」