文句いうなら、どんどん出世して、給料たくさんもらって来い、と言いたいのを麻紀は拳を握りしめ、ぐっと我慢した。
働こうにも、下手に子供を保育園や学童保育などに預ければ、保育料がかかり、却って赤字になる。
そんなある日。
麻紀は自宅から歩いて3分ほどの近所のスーパーで深夜レジのパート募集の広告を見つけた。
夜10時から12時まで時給950円。
12時から閉店の午前1時までは1000円だ。
ーーーこれだ!!
と麻紀は思う。
そうだ、子供達が寝かしつけてから、働けばよい。
それなら、手間も金も掛からない。
深夜なら、日中と違って客も少ないし楽が出来そうだ。
睡眠不足は昼寝をして補えばよい…!
「そんなのあぶねえよ。誰もいない時、子供に何かあったらどうするんだよ」
シフトでひと月に半分程、夜勤のある真和は子供たちを心配する。
だが、麻紀は引き下がらなかった。
病気でもない限り子供達はトイレ以外、夜中に起きたりしない。
『何かあったらすぐにママの携帯電話に電話するんだよ!』
当時小4の長男竜聖にしっかりと言い含める。
携帯電話の番号をでかでかと書いた紙をテーブルに置き、自転車に飛び乗って勤め先のスーパーに向かった。

