僕、
名前はユリア。肩書きは、黒魔術師。でも、大体の魔法は使用出来る。いわゆる魔法はオールマイティ。
タコみたいな色の足が、茹でたみたいにくねくねしている。体は、魔術師を名乗るから、鍛えてない。細い。華奢とかよく言われる。ローブも長いコートで、まるでワンピースのようだから、度々背が高い女に間違われる。
名前からしてそうだ。これを考えたのが父親って言うんだから、同じ男でも感性が理解できない。
ただ、いつか風の噂で聞いた
"体の弱い少年に、少女の格好をさせると体が強くなる。"
とかいうものにのっとって、病気と呼ばれるものになったことがない。別に体は弱くなかったらしいが、それだけなら誇ってもいい。むしろ、女っぽいことはそれ以外なんの得にもなっちゃいない。
その理由の大半は、僕の眺める先で、規則正しい寝息をたてながら眠る少年にあると思う。
少年、
なんて言ったら多分怒られる。けど、僕から見れば彼は少年だ。名前はケイ。肩書きは、いわゆる勇者。魔法だって剣だって弓だって、はたまた毒とかそういう類いだって、基本使いこなしてしまう。僕なんかより、よっぽどオールマイティだと思う。しかし、やはり勇者と言えば剣と盾。と彼は言うのをやめず、それ以外はめったに使わない。正直、彼が魔法を使ったら、僕の出番がないからその思考はありがたい。
髪色は茶色。肩より少し短く切られている。ボサボサとしているように見えるが、触ってみると案外さらさらしていて柔らかい。彼にそれを言うと、なにも手入れなんてしていないと返ってきたから、思わず嫉妬した。体は、ちゃんと筋肉がある。触ったら固いと感じてしまうくらいに。前は僕を、軽々しく姫抱きにした。まぁ、剣も盾も重たいのだから、それ２つに比べると、僕なんて軽いと思う。
それでも、僕より少し小柄なのだから、訳が分からない。
服は勇者らしく、特別に支給された軽めのプレートメイルがメインだ。もちろん今は脱いで、シャツとズボン姿になっている。脱ぎ捨てられた形のプレートメイルは、僕が綺麗にした。
今日は、久しぶりの街、久しぶりの宿だ。余程疲れていたのだろう。ついてそうそう、ぶっ倒れた。僕が魔法を使えなかったら多分、ベッドまで運べなかった。考えがないというか、バカというかなんというか。
――そんなところが可愛いと思うなんて、いつから思うようになってしまったのか。知れる魔法なんてないはずだ。知りたくもないけれど。
座っていた自分のベッドから立ち上がり、ケイのベッドの方へ座った。タオルケットはすでに、放り投げられていたので、仕方なくそれを被せた。とたん、ふにゃりとその顔が緩んだ。いいタイミングすぎる。
いい夢でも見れているのだろうか。戦いで疲れたのだから、せめて夢の中でぐらいは幸せに、と髪を撫でた。やはり、思わず嫉妬するくらいにさらさらとしている。僕の髪はどのくらい頑張ってもタコになるというのに。
｢面白いし、好きだよ。お前の髪。｣
ふと、ケイの言葉が頭を過って手を止めた。忘れられない言葉。向こうは何気無く言ったのだろうが、僕には重い。
→
名前はユリア。肩書きは、黒魔術師。でも、大体の魔法は使用出来る。いわゆる魔法はオールマイティ。
タコみたいな色の足が、茹でたみたいにくねくねしている。体は、魔術師を名乗るから、鍛えてない。細い。華奢とかよく言われる。ローブも長いコートで、まるでワンピースのようだから、度々背が高い女に間違われる。
名前からしてそうだ。これを考えたのが父親って言うんだから、同じ男でも感性が理解できない。
ただ、いつか風の噂で聞いた
"体の弱い少年に、少女の格好をさせると体が強くなる。"
とかいうものにのっとって、病気と呼ばれるものになったことがない。別に体は弱くなかったらしいが、それだけなら誇ってもいい。むしろ、女っぽいことはそれ以外なんの得にもなっちゃいない。
その理由の大半は、僕の眺める先で、規則正しい寝息をたてながら眠る少年にあると思う。
少年、
なんて言ったら多分怒られる。けど、僕から見れば彼は少年だ。名前はケイ。肩書きは、いわゆる勇者。魔法だって剣だって弓だって、はたまた毒とかそういう類いだって、基本使いこなしてしまう。僕なんかより、よっぽどオールマイティだと思う。しかし、やはり勇者と言えば剣と盾。と彼は言うのをやめず、それ以外はめったに使わない。正直、彼が魔法を使ったら、僕の出番がないからその思考はありがたい。
髪色は茶色。肩より少し短く切られている。ボサボサとしているように見えるが、触ってみると案外さらさらしていて柔らかい。彼にそれを言うと、なにも手入れなんてしていないと返ってきたから、思わず嫉妬した。体は、ちゃんと筋肉がある。触ったら固いと感じてしまうくらいに。前は僕を、軽々しく姫抱きにした。まぁ、剣も盾も重たいのだから、それ２つに比べると、僕なんて軽いと思う。
それでも、僕より少し小柄なのだから、訳が分からない。
服は勇者らしく、特別に支給された軽めのプレートメイルがメインだ。もちろん今は脱いで、シャツとズボン姿になっている。脱ぎ捨てられた形のプレートメイルは、僕が綺麗にした。
今日は、久しぶりの街、久しぶりの宿だ。余程疲れていたのだろう。ついてそうそう、ぶっ倒れた。僕が魔法を使えなかったら多分、ベッドまで運べなかった。考えがないというか、バカというかなんというか。
――そんなところが可愛いと思うなんて、いつから思うようになってしまったのか。知れる魔法なんてないはずだ。知りたくもないけれど。
座っていた自分のベッドから立ち上がり、ケイのベッドの方へ座った。タオルケットはすでに、放り投げられていたので、仕方なくそれを被せた。とたん、ふにゃりとその顔が緩んだ。いいタイミングすぎる。
いい夢でも見れているのだろうか。戦いで疲れたのだから、せめて夢の中でぐらいは幸せに、と髪を撫でた。やはり、思わず嫉妬するくらいにさらさらとしている。僕の髪はどのくらい頑張ってもタコになるというのに。
｢面白いし、好きだよ。お前の髪。｣
ふと、ケイの言葉が頭を過って手を止めた。忘れられない言葉。向こうは何気無く言ったのだろうが、僕には重い。
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