HIVに捕らわれて

お別れの時がやって来ました。


僕はサキの手を握りました。


看護婦が駆けつけ、心電図を睨みました。


彼女の体は一瞬痙攣し、最後に小さな血を吐きました。


静かな死でした。


彼女の生きた強烈な証を見つけたかったけど、何処にも見当たりませんでした。


ただ側に、今はもう書かれることの無くなった古ぼけた日記があるだけでした。


死亡の時刻が告げられると、病室で僕一人になりました。


そして本当の意味で、独りになりました。