彼は責める事さえせずに私を汚いものでも見るみたいに、哀れんで出て行ったのよ。これが私達の現実なの」


アヤの目に涙はありませんでした。


きっと彼女はこの事で何度も傷つき、涙が枯れてしまったのでしょう。


代りに僕が泣いていました。


静かな部屋の畳みの上にボタボタと音がして、
後から後から落ち続けました。


僕らはその音をしばらく二人で聞いていました。