もう少しだけ、あなたのそばに


「あなた、悪いんだけど、少し常務と仕事の込み入った話がしたいから席を外してくれる?」


「おい、何を言っている。別に彼女がいてもかまわないだろう?」


「そうはいかないですわ。彼女はこの会社の人間ではない、部外者だわ。」



心に何かが突き刺さったような気がした。


それは、大きな棘みたいな物。



あまりの大きさになかなか抜けない棘。



「わかりました。失礼します。」



私が入口に向うと、



「花憐!」



少し焦ったような声を上げる秋。



「あの、喉が渇いたので、何か飲んできますね。」



私は、秋にそう告げて、部屋をあとにした。