もう少しだけ、あなたのそばに


「そうなんだ。でも、すごいよ。助かった。な?」


「はい。とても助かりました。5時からの会議にも間に合いました。本当にありがとうございました。」


「いえ、いいんです。私ももうお仕事終わりなので、暇でしたし。」


「そうなんですか?あの、お礼をしなくちゃいけません。
あ、でも、今日は、残業だしな~。あ、携帯教えてもらえません。後日改めてお礼がしたいです。」


目を輝かせて言う彼女に釣られて思わず、番号&アドレス交換をしてしまった。


「おお~、いいねえ。この間、いい店見つけたんだよ。」


「あれ~、倉橋さんも行くんですか~。」



彼女がからかうようにいうと、


「桜井さん、俺がここにいなかったら、月島さんとも話せなかった。そしたら~」


「ああ、はいはい。わかりました。では、その倉橋さんがお勧めのお店に行きましょう~♪」


「おお、いいぞ。」


「あ、倉橋さん、三人っていうのもあれですから、安西さんも誘ってくださいよ。」


「へえ~、桜井さんは、安西狙いか~。」


「え、ち、違いますよ。どうせならって思っただけですよ。」



顔を赤くしながら、バレバレの言い訳をする可愛い彼女。

私を無視して勝手に進んでいく御礼という名の集まり。



さて、私はこの集まりに行っていいものだろうか?

はたまた、それを秋が許してくれるのだろうか?



そんなことを二人の会話を聞きながら、ボーと考えていると、



「花憐。」



秋の声がすぐ後ろで聞こえた。