もう少しだけ、あなたのそばに


「誰か来ましたよ。」


この部屋に私の知り合いは来ない。


「チッ」


秋が舌打ちをして、インターホンに出る。



「はい。」


『あ、新城さん。私、留美です。』



その声はとても聞き覚えがあった。

ついさっき、聞いた声。

あの封筒を持ってきた彼女の声だった。



一瞬、私の方に振り返る秋。

私は、立ち上がり、キッチンへ向おうと秋に背を向けた。



「何か用?」


私が怒らせたときもこんな冷たい秋の声は聞いたことがなかった。

思わずのその声に私の足もすくんでしまう。



『あ、あのね、今日、封筒をお願いしたんだけど、ちゃんと、渡してくれたかと思って。』



「・・・・・・・・・・・」


『ほら、大切な仕事の物だし、忘れられたら大変だと思ってね。』


私になんか任せられないってことか・・・・。

なら、はじめから、私に渡さずに自分で持ってくればよかったのに。