もう少しだけ、あなたのそばに


いつか、こんな日が来るとは思っていた。

思ったよりもそれは、心が痛んで、その後、どうやって、家まで帰ったのか、よく覚えていない。


「花憐。」


急に名前を呼ばれて、我に返った。


「あ・・・・おかえりなさい。秋。」



帰ってきたのは、夕方だったはずなのに、いつの間にか、日は暮れて、夜になっていたようだ。


「どうした?」


「あ、ごめんなさい。夕食!・・あ、急いで作ります!あ、その前にお風呂!」



急いでソファから立ち上がろうとすると私の肩を秋の手が制した。



「いいから、座って。」



私の前に膝を着いて、私の顔を覗き込むように見てくる秋。



「何があった?」



「何もないよ。」



「・・・・わかった。”誰が”来た?」



そうか、安西さんが秋に言ったのか。


でも、なんて言ったらいいのだろう。だって、私はあの人の名前すら聞いてない。