隅から出てきた、すでに顔の赤い千果ちゃんを見たまま、あたしは言った。
「…あたし、待つって決めたんだよね」
まだまだ、まだ待てるよ。
アイツ以外考えらんないから。
あたしには待つしか出来ないけど。
田辺がこちらを見た気がしたけど、あたしは前だけを見ていた。
「それなら…」
田辺の手が、あたしの頭をポンッと叩いた。
……??
「大河内千果さんの、想い人は誰ですかー?」
田辺と目が合う。
体育館はかなり盛り上がっているのに、あたしと田辺の間にだけは静かな空気が流れているみたいだった。
「そう決めたなら、もう泣くなよ」
「え…」
どういう意味?
「えっと…、サッカー部キャプテンの…」
会場が盛り上がりを増す。
田辺はあたしから目を離し、ステージの方を見る。
あたしには1度も向けなかった、柔らかい眼差しだった。
「た…田辺、潤先輩…ですっ」
「はい!では田辺潤くん、前に出てきて下さーい!」
あたしもステージに目を向ける。

