今までは、いつも俺が強引にキスをしてきた。



でも今、俺にキスしてきたのは紛れも無くコイツだ。



俺が無理やりしたわけでも、強引にしたわけでもない。



ソッと唇を離した姫央は、恥ずかしそうに下を向く。



「あ…あたしは流が、ヨボヨボになっても好きだから!」



………。



ヨボヨボはもうこの際、スルーするとしようか。



これは計算だろうか?



狙って、わざとやってんのか?



普段全然可愛いげないくせに、こんなこと言ってるのは。



もう俺に、理性を保たなくていいって言ってるのか?



葛藤なんてしなくていいって?



「…ちょっと、聞いてんの…んんぅ…?!」



真っ赤な顔で不安そうに顔を上げた瞬間、俺は姫央を壁に押し付け、もう一度唇を重ねた。



理性がぶっ飛びそうだ。



もう、これくらいにしとかないと。



「……んぅっ…」



今までの葛藤や我慢が、全部無駄になる。



いくら俺だって、男だ。



自制の限界なんて見えてる。



「……ん…はぁっ…」



ゆっくりと離した唇から、互いの熱い吐息が漏れる。



深く長いキスの終わり。



それはこの時間の終わり、別れを意味していた。



「…今すぐにでも押し倒してや(ヤ)りたいけど、お前の処女は、まだとっといてやるよ」



低い位置にある姫央の頭の上に、手を軽く置いた。



「…とっとと行って、とっとと帰ってこい…バカ!」