アイツは、息を切らしてここまで来た俺を、驚いた顔でしばらくの間見つめていた。



というより、放心状態だ。



そして沈黙の末、なにも言わずに布団に潜り込みやがった。



なんだよ。



そんな反応かよ。



俺がそんなに嫌かよ。



好きだとか言ったくせに。



俺は少しベッドに近づく。



「婚約断れって言ったけど…」

「断ったから!」

「え…!?」



相変わらず、布団をかぶったままの姫央。



「もう親には言ったから、安心してよっ!」



……はぁ?



「それでいいのかよ」

「アンタが断れって言ったんでしょ?!…なによ今更」



そうなんだけどさ。



「でもさっき…」

「あ、あれね!あれはもう、過去の話よ!今はもう、アンタなんか好きじゃないんだから…っ」



俺の言葉を遮る姫央。



「だからあたし達もう関係ないの!」

「………」