なんとか家に辿り着き、あたしがまず向かった先は、お父さんとお母さんの部屋。
“コンコン”
「はーい?」
「…あたし」
部屋にはいると、ソファーにお母さんが座って雑誌を読んでいた。
「…あら、どうしたのその顔?!」
「…お母さん、あたし婚約断る」
「え?」
お母さんは雑誌をほおり投げ、あたしを見つめる。
あたしは目なんか合わせらんなくて、下へと視線をそらす。
「そういうことだから。お父さんにも言っといて」
「ちょっと姫央、何があったの?!」
「何にもないよ。ただ気が変わっただけ」
あたしは逃げるように部屋を出た。
自分の部屋に行き、ベッドに潜り込んだ。
「…うぅー…」
何も考えなくても溢れ出る涙。

