「よかった、すぐに見つかって。写真がアレだったので…」
写真…?
「俺は桃井財閥の長男、桃井陽向です」
「その写真、ちょっと見せてほしいんだけど」
「え゙…写真、ですか」
俺は躊躇う少年から、半ば無理やり携帯をうばいとった。
………。
「あ、あの…?」
“ピッ、ピピッ”
「あ、ちょ?!」
「この写真は忘れろ。これは俺じゃない誰かだ、いいな!?」
「はい!?」
思った通り、ディスプレイには白馬の王子姿の俺。
迷わず消去。
「…で、誰だって?」
「ひ…姫央の弟です」
「…弟が俺になに?」
「突然ですけど、流さんは姫央のことが好きなんですか?」
「は…?!」
いきなり現れてなに言い出すんだこのガキ!?(←さっき自覚した人)
「…実は、姫央がこの婚約を断れないのは、俺のせいなんです」
陽向は俺の隣に座る。
「どういう意味だよ」
「桃井財閥も、実は余裕があるわけじゃないんです。だから俺か姫央のどちらかは、どこかの財閥と政略しなければいけない」
………。
しばらく言葉が出なかった。
断れないから断らない。
それが理由か。

