知らない間に、あのめんどくさい奴に惚れてしまった。
この俺が。
自分から惚れたことなんて、1度だってない。
どこがだとか、そーいうのじゃない。
でも目が離せなくて、俺でいっぱいになればいいと、思ってしまう。
信じがたい事実って、こういうことを言うのか。
でも、好きだとは言えないだろう。
言ったところで、気まずくなるだけだ。
それはどうかと思う。
しかも俺は、今だに気になることがある。
コイツが、なんでこの婚約を断らなかったのか。
断ろうと思えば断れたはずなのに。
今沢財閥(俺)に気をつかってるのか。
他に断れない理由があるのか。
どうも分からない。
アイツのことは、何一つ分からない。
「…あの」
「?!」
考えることに必死になってた俺は、人が近づいていたことにさえ気付かなかった。
「今沢流さん、ですよね?」
……中学生?
「…誰?」

