洗っても洗っても。
こすってもこすっても。
消えることはない。
あのまま逃げれなかったら、あたしは今頃どうなってたんだろう…。
“キュっ”
あたしじゃない、他の誰かの手によって、蛇口の水が止められた。
驚いて顔をあげると、今1番会いたくない奴がそこにいた。
「お前、なにやってんだよ…?!なんで泣いて…」
「なにもない!泣いてない!」
流の言葉を遮って、大きな声で言った。
「…飲み物なら、今から買いに行くの!」
必死に頑張ってそう言ったのに、流は背を向けて歩き出そうとしたあたしの動きを止めた。
「…なにされた」
「……なに…が」
いつもより低い声。
なんで怒ってるの?
「…誰になにされたかって、聞いてんだよ」
怖い。
だけどあたしがなにされようと、流が怒る理由なんてないでしょ?

