「…ごめん、なさい」

「それ以上言うな」



口は相変わらず乱暴だけど、どこか優しい。



なんでアザまでつくってあたしをかばうの。



その優しさは反則だ。



好きでもない子に、そんな優しくしないでよ!



…って言いながら、本当は喜んでる。



ほんと勝手だ。



矛盾だらけの自分に呆れるけど、仕方ない。



だってこれが、恋なんでしょ?



アンタが教えてくれたんだよ。



「…なにボケっとしてんだよ」

「べ、別にしてないけど!」

「あっそ。じゃ、俺帰るから」

「あ、はい」



流が部屋を出ていくと、ただでさえ広すぎる部屋が、余計広く感じた。



「はぁー…」



婚約は断れないだとか。



好きでもないのにキスすんなだとか。



好きでもないのになんでかばうのだとか。



好きでもないのにそんな優しくすんなとか。



それってもしかしてさ。



贅沢な悩みなの!?