そして目の前にそびえ立つ、ビルの中へと入った。



中は、だだっ広いホールみたいなところに、階段やエレベーターがあった。



お母さんはエレベーターにのり、25階のボタンを押した。



それでもまだ、ビルの中間地点くらいだ。



高所恐怖症の人には、たまったもんじゃないよね。



あたしは暗所恐怖症だから大丈夫だけど。



そんなことを考えているうちに、35階なんてあっという間。



“チーン”



という音と同時に扉が開く。



エレベーターからおりて、和室らしい部屋の前の襖まできて、お母さんの足が止まった。



「姫央。もう一度言うけど、いやなら言えばいいのよ?」

「…うん。大丈夫」



この襖を開ければ、あたしの恋が終わる。



まだ、始めたばっかだし。



まだ、諦めつくし。



まだ、大丈夫。